『次の世代に何かを残す』出会い

HALのvisionは『次の世代に何かを残す』です。
このvisionを実現するため、我々HALは、ビジョンの方向が同じ企業、団体、個人と一緒に活動していきたいと考えています。
本コンテンツはその対談シリーズ第1弾。
代表の佐藤が、HALのビジョンに共感して下さる方をお迎えして、対談をします。

ビジョンが共感しあえる企業同士がコラボし、我々はIT技術を提供し、その企業さまのビジネスをサポートしていく。そして、その先に『次の世代に何かを残す』という世界を実現する。

そんなことを考えていた時に、出会ったのが「地域の眠れる資産を顕著化し、森への期待を喚起し、人々の連綿たる想いをつなぎ、世の流れを創造する」をミッションとして活動を続けている株式会社トビムシ代表取締役竹本吉輝さんでした。

― 新しくつくる自分達のオフィスは、木の床にしたい ―

オフィスをお台場から代々木に移転することにしたとき、佐藤がこだわったのは、たった2つのことだけでした。

1つ、自分たちのオフィスを自分たちでつくりたい
2つ、木の薫りがするオフィスにしたい

その譲れない2つの『こだわり』が、思いがけず、新たな出会いを引き寄せることになったのです。

佐藤)
オフィスを移転しよう、と決めた時に相談したのが、オフィスデザイン会社の 株式会社ツクルバと、プロジェクトディレクションの株式会社DE-SING でした。
その2社に伝えたのは、まず、「木の床にしたい」ってことでした。

竹本)
ありがたいことに、その2社から提案していただいたのが、うちの床材、ニシアワーの『ユカハリ』 だったんですよね。

佐藤)
はい。その両社から全く同じものを紹介されました。
「とにかくこれはいいぞ、気持ちいいぞ」ってね。
それに、「これなら自分たちで貼れるぞ。しかも、安いぞ」って。即決でした(笑)。

竹本)
実際に使ってみていただいて、いかがでしたか?

佐藤)
真夏の盛り、8月に移転したのですが、とにかく気持ちがいい。
杉材って、歩くとよくわかるんだけど、やわらかいんですよね。
足への負担がとっても少なくて、本当はずっと素足でいたい感じです。
衛生面で嫌う人もいるから、オフィス内はスリッパを履くようにしているけれど、自分のデスクの下では、スリッパを脱いで素足で仕事をしている人もいます。
それに、我々はオフィスにいる時間が長いから、気持ちのいい空間、落ちつく空間であることがとても重要なんです。
それと、これも大事なことなんだけど、デザイン的にも良かった。
オフィスに入って、パッと見た瞬間に、いいな、って思えることはすごく大事なことなんですよね。

竹本)
ありがとうございます。そう、絶対に素足が気持ちいいですよね。

佐藤)
それにね、衛生面でもすごく優れているのがよくわかりました。
オフィス用の絨毯マットは、チリやゴミを吸うから、ゴミが舞わなくていい、なんていわれているけれど、そんなことはなくて、そのマットの中にはゴミがたまり続けているわけですよね。しかも、それが目に見えない。
それに比べてこの杉の床は、とにかくよくゴミが目につく。必然的に掃除をする。いや、せずにはいられないです(笑)。

竹本)
まぁ、そこはぜひ、よろしくお願いします(笑)。
それと、杉の薫りはいかがですか?

佐藤)
はい、それがいい薫りで。僕は時折、霧吹きで床に水を撒いたりしています。
そうすると、杉の薫りがまた立ってくる。
みんなは足元が湿る、って嫌がったりするから、朝早く来て、こっそりね。
でも、薫りでばれる(笑)。
それに、室内全体の調湿をこの木の床がやってくれているのが、よくわかります。
朝、オフィスに着いたら、気持ちがよくて深呼吸している自分がいる。
僕だけじゃなくて、みんなも。
雨の日にもじめじめした感じにならない、っていうのもすごく快適です。

― この床材をつくっている人に会いたい ―

入居して1カ月後。
この床材を強く薦めてくれた株式会社DE-SING代表取締役の佐藤浩也氏から「この床材をつくっている人、面白いから会ってみれば」と、言われました。
それが、二人の最初の出逢いでした。
そのときはまだ、『株式会社トビムシ』という社名も、岡山県西粟倉という地名も、竹本さんという人も佐藤は知らなかったのです。

佐藤)
DE-SINGの浩也社長とは古い付き合いで、彼が「面白い人だよ」っていう方なら「ぜひ、会ってみたい」って思ったんです。
それに、この床材の良さを実感としてわかるようになっていたから、この製品が生まれる背景を知りたいな、って。

竹本)
佐藤浩也社長からお声をかけていただいて、9月にうちの営業部長の村上と一緒にドキドキしながらHALさんにお邪魔しました。
自分達の床材を使って下さったオフィスには、当然関心があります。
僕たちは、このプロダクツ(床材)が使われはじめた時から、IT企業のような、社員みんながパソコンに向き合う仕事をしている空間にこそ、この無垢の木を使ってもらいたいと思っていたんです。
それが、ここにお邪魔したら現実となっていた。
こういうオフィス空間があったらいいな、と思っていたものが、そのままカタチになっていたんです。
本来なら無機的で殺伐とした風景になりがちなのに、ここは風景全体がやわらかく、あったかい。
ほんと、足を踏み入れたときから、感動、感謝、感激!でしたね。

佐藤)
いえ、いえ、こちらこそです(笑)

竹本)
あの日は嬉しくて、僕はずっとしゃべり続けていたと思います。
HALのこのオフィスは、僕たちの、これからの展開の礎ともなる記念すべきオフィスなんです。
こうした床材の販売は、最初は個人向けに進めていたのですが、本格的にスタートした2012年の夏前頃から、徐々にオフィス向けに動き出しました。
それ以前に反応、購入してくださったのは、環境問題に取り組んでおられるNPO団体や、環境ビジネスに関心を有する会社などでした。
環境に優しい会社が環境に優しい空間をつくっている、というのは、もちろん有難いのですが、もっとごくごく普通の会社でも使っていただき、森の現状や地域の問題に対する意識を、より多くのオフィスに拡げていきたいって思っていましたから。

佐藤)
こんな風に木を使ったオフィスが増えていくといいですよね。

竹本)
はい。例えば、僕たちの生産拠点である岡山県の西粟倉村で1年に生産できる木の床を全て使ったとしても、六本木ヒルズ、ワンフロア分くらいにしかなりません。
六本木ヒルズは50階建てなので、ワンフロアずつ使ってもらえたとしたら、西粟倉の生産者は50年、林業周りで食べていけるわけです。
そう考えると、東京の床は無限にあるわけで……。
国は森を再生するのに、多くのお金が必要だ、大変だ、などと言っていますが、森を中心とした産業がきちんとまわり、東京の様々な会社が床に国産間伐材を使ってくれたら、日本中の森がちゃんとよみがえるんですよね。

― 森を始点に動く、人とモノの循環 ―

佐藤)
そう、あの日。竹本さんは、森の話を3時間近くずっと話してくださいました(笑)。

竹本)
僕、『地域』と森の『構造』の話になるととまりませんから(笑)。
それに、佐藤さんが『循環』という言葉にとても反応してくださいましたし。

佐藤)
HALを立ち上げた時から『循環』には興味がありました。
ベトナムでいろいろなビジネスを展開しながら、一番思ったことは、 やっぱりもう少し日本をちゃんとしよう、ってことだったんです。
『日本』に集中して考え続けていくと『循環』というキーワードに行きつきます。

竹本)
日本は国土の7割が森という世界に冠たる森林国家で、しかもその森の4割が杉や檜の人工林です。
僕たちの生活は本来、森を始点に循環し、動いていました。
それなのに今は、北欧や北米、東南アジアの木をどんどん使って家を建て、日本の森は放置されている。
国内の木は切らない。切ってもそこに捨てられたままだったりするんです。
日本の中で、きちんと産業の循環ができていたら、国外の不法伐採もCO2の問題もなくなるはずなんです。

佐藤)
その『循環』をどう再生するか、が難しい。

竹本)
近代化の流れの中で分断された『循環』を再生するのが僕らの仕事です。
まず、森を守るためには人の手が入り、間伐をしないと森は再生しないのですが、コスト面でかなり厳しい。
僕はもともと法律畑の人間だったので、法律を使って様々な環境問題を解決できないか、と動いてきましたが、規制をもって、やめさせることで解決する問題はいいのですが、人が能動的に関わらないと解決できない問題は、やっぱりダメでした。
ならば、森をはじめとした様々な構造的問題に、地域の人や地域外の人が、積極的に関わるようなビジネスをつくろう! そうすれば、林業や木材業といった、地域を支える産業が営まれ続け、大切な存在を次の世代に残せるじゃないか、というのが、僕たちトビムシのやっていることなのです。

佐藤)
経済の循環を促して森を守る、ですね。

竹本)
例えば間伐材から床をつくる。その端材で割り箸を作るとおが粉ができる。
そのおが粉は地域の畜産農家の家畜の糞と合わせて有機肥料となり、美味しい野菜を育てる素になる。あるいは、そのおが粉でペレットをつくる。
この床のある部屋で、美味しい野菜を割り箸を使って食べる。
ペレットストーブで暖をとる。こうしたことが一つの循環なんです。
今は、畜産農家が家畜の寝床として必要とするおが粉が国内で上手く流通できていないため、まるで空気を運ぶように、わざわざおが粉を輸入したりして使っています。
抗生物質等の過剰投与がゆえ健康を害した牛や豚の糞と輸入おが粉(ときに防腐剤入り!)を合わせたものが一応有機肥料と呼ばれたりしているのですが、そんなものを使っても美味しい野菜は育ちません。
結果的に農家はその有機肥料を使えず、結果として化学肥料を使わざるを得ない状況が生まれたりもしています。
つまりは、森の循環、物質の循環、人のつながりが大事なんです。
戦前までは、地域独自のルールや入会(いりあい)の観念があって、お互いルールを守り、肩を寄せ合いながら暮らしていました。
例えば、上流から流れてくる水を、いかにして下流の家まできれいに保って使い切るか、みんなで一緒にちゃんと考えてやっていこう、などということができていたわけです。
仲が良かったというよりも、そうしないと生きてこられなかったからです。
だから、流域沿いでの紛争も間々ありました。
今は、貨幣経済に巻き込まれ、地域や流域の全体最適を整える必要を感じることもなく、外から少しでも安いものを調達するようになってしまったために、都市だけでなく、地域の関係性がどんどん分断されている状況なんです。
隣で何をしていようが、何をつくっていようが関係ない、と。
そうした部分最適ではなく、小さなところからちゃんと循環させていく、
そんなつながりや積み重ねで様々な問題を解決し、全体最適を整えなければならないのです。

佐藤)
そこをなんとかしないと、大切なものは残せない。

竹本)
基本的に僕らが一番目指すところは、人と人のつながりを、地域においてもう一度興していくことです。
そうすると人と人、人とモノが離れなくなる。森を豊かにするのは、そのひとつの象徴なんです。

― 岡山県 西粟倉村 森の学校へ ―

佐藤は、竹本さんの話をお聴きするうちに、その竹本さん率いる株式会社トビムシの理念や活動に深く共感し、心から応援したい、と思ったのでした。
そして、11月。トビムシさんの活動拠点、この床材が生まれる岡山県西粟倉村へ行くことに。
森の恵みを存分に体感できる 『森の学校』 にもお邪魔し、その「想い」はより強くなったのでした。

佐藤)
DE-SINGの浩也社長と一緒に西粟倉へ伺ったんですが、あのときはもう一面真っ白な雪景色でした。
そこで出逢った、現場で働く方々の目の輝き、空気感、廃校を利用した森の学校、間伐材を割り箸にする製造機械のエンジニアリング……、どれもすごく印象的でした。
仕事自体はとても大変で地道な作業なのに、とにかく働いていらっしゃる方の目がキラキラしていて。
森を守る、次の世代に残す、という明確なものがあるからでしょうか。

竹本)
いろいろな経歴の人が集まっています。Iターンで来てくださった方が60名くらい。
地元の人、Uターンの人もいます。関わり方も様々です。
役場・森林組合・自分たちで職人になるといった人たち……。
森の学校でいえば、工場で床・柱・割り箸・小物・家具を作る製作スタッフと、 コミュニケーション・マーケティングしながら販売する営業スタッフもいます。

佐藤)
自分たちの経営以外にも、森を起点に、木で食べていく人たちを増やしているというのが、すごいと思ったんですよね。

竹本)
森の学校で修行して、カフェやショップを新たに開いたりしている人もいます。
廃校を利用しているからだけでなく、そういった意味でも、本当に『森の学校』になれたらいいな、と思っています。

― 『100年の森林構想』・理念が人を引きつける ―

佐藤)
家具をつくっている大島正幸さんもすごい方ですよね。

竹本)
彼はこの西粟倉村全体で掲げている 『100年の森林構想』 に共感して移住してきてくれたんです。
森を守る、つなげる、という大きな理念が彼の心を動かしたわけです。
もともと彼は、日本でも有数の家具メーカーの家具職人で、主に海外の広葉樹を使って家具をつくっていたそうです。
だけど彼の中には、日本で使う家具の材料は日本の木が一番いいんじゃないか、という想いがあって、風景をつくるモノづくり、自分たちが家具をつくることで未来の風景をつくる、それが自分たちの夢だ、と話してくれました。

佐藤)
僕にもその話をしてくださいました。彼も話し出すととまらない(笑)

竹本)
ですよね。彼は寝る暇もないほど忙しいのに、木や森の話になるととまらない。
彼が最初に移住してきた時点では、製材工場も何もなくて。
いまでこそ笑い話になっていますが、「木はどこにあるんですか?」って聞かれた現地の責任者が、「その辺にいっぱい生えているじゃない」って真剣に答えた、って(笑)。
自分で木材を調達する、ってところからのスタート。
そんな風に、試行錯誤しながら彼らの今があるんです。

佐藤)
構想・理念が人を引きつける最大の証明ですね。

竹本)
針葉樹は広葉樹に比べて柔らかいので、ラインの細い家具にすると耐久性に問題が生じやすくなります。
彼らは、そんな大変さと向き合い、克服するよう、日々努力しています。
誇張ではなく、針葉樹でこれだけのものをつくれるのは彼しかいない。
本当に素晴らしい家具をつくっています。
50年先の未来の風景を自分も一緒につくりたい、それには日本の木を使う。
しかも大切に、有効に使う、ということを彼は誰よりも考えている人かもしれません。

― ヒメボタルが飛び交う森に ―

佐藤)
そして、感動したのはヒメボタルのお話でした。
トビムシさんの参画する西粟倉村の取り組みは、戦後50年でつくってきた森を、 次の50年で次の世代に残す森にする、という100年構想なので、完成時にはみんな死んじゃっているね、って(笑)。
だから、この百年の森林構想が完成する時には、みんなでホタルになって集まって宴会しよう、ってお話です。
そうしたら、この構想を立上げられた西粟倉の道上元村長さんが、「俺が、最初にホタルになるな」って、おっしゃったんですよね。

竹本)
はい。森は間伐をきちんと行い、空間に光が入るようになると下層植生が豊かに育ちます。
そして、そこに清流があると、ヒメボタルが生息し出すんです。
つまり、ヒメボタルは林業がちゃんとしているところにいるんです。
いくら天然林でも、鬱蒼としているところにはいません。
ヒメボタルは日本中であまりみられなくなってきていますが、西粟倉にはいっぱいいるんです。
丁度、ヒメボタルが出てくるのが七夕のシーズンで、天の川も見える満天の星空の下にたくさん飛んでいて、それはそれは、きれいですよ。

佐藤)
ぜひ、見てみたいですね。今度は夏に伺います!

― トビムシとHALの資本提携 ―

西粟倉から戻って数日後、佐藤のもとに、竹本社長から1本の電話がかかってきました。
その内容は、株式会社トビムシの株主になってもらえないか、というものでした。

佐藤)
戻ってからずっと、一緒に何かできることはないか、と考え続けていたのでお電話をいただいたときにはびっくりしました。

竹本)
ちょうど既存の投資家の方から株を譲りたいという話があり、すぐに浮かんだのが道明社長でした。
二日間、ずっとご一緒させていただいて、温泉にも入って、道明社長が何を考え、我々の活動にどう共感してくださっているのかが言葉・空気感でよくわかったんです。
だったらぜひ、株を持っていただきたいと思い、ご連絡したんです。

佐藤)
いやぁ、嬉しかったですね。

竹本)
よく覚えているんですが、説明したらすぐに「ありがとうございます」と、お返事をいただきました。
「出資していただけませんか?」という話に対して、普通のリアクションは「ちょっと考えます」「それは、どういうことですか?」「もっと詳細を教えてください」です。
これはネガティブな意味ではなく、お金が動くので当然なことなんですが、道明社長は「ありがとうございます」を連呼された(笑)

佐藤)
だって、一緒に何かができる、と思うと嬉しいじゃないですか。
これからは単独ではなく、様々な企業・NPO・個人と一緒に活動しながら「次の世代に何かを残す」ことを具体的にしていきたいと思っていたんです。
どちらかが儲かる、ということよりも、興味、共感が響きあうもの同士がコラボすることで、実現することが格段に増える。商売はちょっと置いといて、やろうよ、みたいなね。

竹本)
やってから考えよう、っていうのが大事ですよね(笑)
まぁ、商売になるかもしれないけれど、ならないかもしれないし。

佐藤)
次の世代に何かを残そうとしている企業と、方向の一致を確認することで、一緒にやっていくことも“見える化”しやすくなり、“見える化”すると、お互いの立ち位置も明確になっていきますよね。

― そして、奥多摩の森でも ―

佐藤)
トビムシさんのビジネスは、西粟倉からさらに拡がっていますね。

竹本)
東京、奥多摩の森も手掛け始めています。
東京の森は西粟倉と同じような側面もあれば、全く異なる面もあるんですが、 林業をやっている人が少なく、地元の木を加工する人も少ないのは全く同じです。
我々は、木を出すところから、製材、そしてマーケティングまでを行う、まさに実働部隊として動いていきます。

佐藤)
コンサルタントというよりも、実働部隊という立ち位置。

竹本)
はい。これまでの経験から、地域の課題はコンサルとして助言するだけでは解決し得ない、と確信しています。
西粟倉の取り組みなどを見て知ってくれていた東京の山主さんが何人かいらして、自分たちの山でもそういうことができないか、とご相談を受けました。
実際にそうした山主さんたちの山を中心に林業をなし、今年から稼働を止める予定だった工場を使わせてもらいながら、内装材や家具などの木材加工をする、そうした事業を今年の秋から始める予定です。
そのため、計画から稼働するまでのこの半年間が、きわめて重要なマーケティング期間になります。
実際にまずはWEBを立ち上げながらコミュニケーションを図り、イベントなどを開きつつ、いろんな人に集まってもらう活動をこの夏からやっていきます。
道明社長には、情報システムを整え、HPをつくるところからご協力いただいて心強いです。

佐藤)
そこは、THE本業、って感じですから(笑)

― ITというツールを使ってできること ―

竹本)
具体的に東京(多摩)の木を多くの方に使ってもらうようにするためには、そのための仕組み・マーケティングが必要となります。
その重要な部分をHALさんにお願いし、イチから一緒に考えていける、というのはありがたいです。

佐藤)
モノ自体の価格は決して安くはないので、なぜそれを買っていただくのか、そのいくつかの理由を伝えていく必要があります。
たとえば『循環』とか『森』というKEYWORDの発信の仕方。
次の世代の担い手として、海外の安い1000円の材料ではなく、1200円だけれど、我々の家の近くにある、自分の町に水が流れてくる上流の奥多摩の木を買いましょう、というようなメッセージ。
そういう価値観を多くの人が持つ、そんな流れが自然に生まれるようにしたいですね。

竹本)
他に、工務店や建築士、エンドの施主の方々に、リアルやバーチャルで森を見てもらう、森にまつわる様々なことを体感してもらうことで、モノの購入や、ファンとして登録をしてもらう流れもつくれるといいですよね。
ツアー参加や小物の購入から始まり、次に家具や内装……。
最終的には家を買ってもらうような仕組みづくりが必要です。

佐藤)
そういう仕組みこそ、ITというツールを使うことで可能になってきます。
たとえば、トビムシロボットなる昆虫型ロボットをつくって、虫の目で見た森の様子を毎日ネットを通して見られるとか。
定点カメラではなく“虫”だから動くし、ときどき「あっ!」なんて鳥に食べられちゃう、なんてこともあったりしてね(笑)。
子どもが幼稚園に入ったら、今度の5歳の誕生日ケーキは無しにして、そのお金で、このトビムシカメラで、一年間森を見る権利を買ってあげようか、なんて、子どもと相談するんです。
みんなが楽しめるバーチャルコミュニティをつくって、そこで遊んでもらうこともITならできるんです。
もちろん、実際に森へ行ってもらうツアーの参加を促したり、イベントの告知も効率よくできる。

竹本)
ITにしかできないことを、ソリューションとして提供して頂ける、という期待感がものすごくあります。
こういったプロジェクトが動き出すと、リアル対バーチャルという二元論ではなく、両者が一緒になった豊かな情報が見えてきそうでワクワクします。

佐藤)
実際に西粟倉に伺ったことで、僕の中では、西粟倉の森とオフィスの木の床が、しっかりつながっているんです。
これから奥多摩でやることも、同じようにつなげていきたいですね。
使って、見に行って、つながる。
なかなか奥多摩には行けない人も、“ITでつなげる”ことで、ずっとつながっていられる。
そんなことを実現したいと思っています。

そして、それが結果として、次の世代に何かを残すことにつながれば、最高ですね。

『次の世代に何かを残す』出会い

HALのvisionは『次の世代に何かを残す』です。
このvisionを実現するため、我々HALは、ビジョンの方向が同じ企業、団体、個人と一緒に活動していきたいと考えています。
本コンテンツはその対談シリーズ第2弾。
CTOの片岡が、HALのビジョンに共感して下さる方をお迎えして、対談をします。

今回は、滋賀県でバラづくりをされている、 ROSE FARM KEIJI、また株式会社 Rose Universe代表 の國枝健一さんに、活動の一つのテーマでいらっしゃる“循環”について、お話しを伺いました。
國枝さんは、土づくりからこだわってバラ作りをされるバラ農家でありながら、国内外に向けた和ばらの進出や、花業界に変革をもたらす 新しい企画やサービスを提案されています。

― 大きな循環を意識して ―

片岡)
「國枝さんがキーワードにされている”循環”っていうのは、生態的な意味のものですか?」

國枝)
「そうですね。」
「僕が日頃から思うのは、”とどまること”って、ないと思うんです。」
「全部はこう、めぐり、流れていて。淀めば淀むほど、良くない。腐敗してしまう。」
「”凪”の状態って、無いと思うんです。」
「正のスパイラルも不のスパイラルも、万物には必ずこの循環のバイオリズムがあるなと。やはり何でも、まわしていく必要があると思う んです。」

片岡)
「なるほどーー。循環。」
「これは、僕にとっても昔からのテーマだったりします。」
「この循環のなかに、僕らはある、っていう、そういうことですかね。」

國枝)
「そうなんです。」
「原理原則として、万物は自然の摂理のままに、各々、どこかしらに自分のパートを持っていると思うんです。」

ひとも自然のいち部分。全ての生きものはめぐり巡り、大きな循環のサイクルの中で、役割を持って生きている。
生物が連綿と紡いできたこの循環のサイクルは、どのような進化を通し、ここまでやってきたのだろうか。

― 変化の過程では、ハードが変わる時、ソフトが変わる ―

生物の進化の過程を辿れば、隕石落下など外要因的な変化が進化をもたらしていることがわかる。生命は自然の循環の中で変化に 対応することで進化を遂げている。この循環の戦略によって生命は次の世代に残っていく。
ハード面の変化は、有る時突如として本質的な変化を生んできた。それは、ひとの技術も例外ではない。

國枝)
「バラの生産で言えば、土で作るとか栽培方法とかはソフトで、温室はハードなんですが、本当にレベルが上がる時っていうのは、 ハード面が変わる時なんですよね。」

片岡)
「興味深いですね。おもしろい話があります。」
「システム開発の技術って、指数関数的に伸びているんです。」
「この変化って、はじめは量的な変化なんです。そして、それはある時を境に、質的な変化になっていくんです。」

「たとえば、ウォークマンの登場って、音楽プレイヤーをただ小さくしていっただけっていう量的な変化なのだけれども、 これが、持ち歩ける大きさになったとき、音楽というものの使い方が変わる。あるいは生活が変わった。」
「ハード面の変化は一定量を達すると、ある時点を境に、質的な変化になるんです。」
技術は緩やかな曲線を描いて上昇して行くのではなく、有る時大きく変貌を遂げる技術革新が起きる。 この技術革新によって、技術は進歩していく。

片岡)
「その意味で、國枝さんがいま新しく作っていらっしゃるハード(温室)は、どんな変化をもたらしていくのかとっても楽しみですね。」

― 本質的なものは美しい ―

循環のサイクルの中で、ハード面の変化を自らで引き起こし、進化をもたらしていこうとする國枝さんと、文明のITの大きなうねりに乗って、 変化していく市場や技術を受け入れながら技術を咀嚼し、残せる仕組みを残していくHAL。
フィールドも手段も異なる両者が、目指していくものとは。

國枝)
「ぼくが目指している美というのは、”引く方の美”っていうものなのですが。」
「僕は美しいというのには二つあって、足す美しさと、引く美しさがあると思ってます。」
「いわゆる人工的なものとか、興奮するとかエネルギーをもらうような。そういうのは、足す美の方だと思うんですが。」
「僕が目指す、引く方の美っていうのは、心が落ち着く美というか、ニュートラルというか。人の本質に、「ぽん」とはまるような。」
「それは機能美の美であって、本来の生態的な原点にはまるような、本質的な美だと思っています。」

片岡)「なるほどね。」
「”機能美”っていうのは、実は僕の中でもキーワードになっていて、多分僕がこの話をするときって、やっぱり”流線型”っていう形の話かも しれないのだけど。」
「飛行機とか、スポーツカーとか、こう”速い形”っていうものは、國枝さんでいう”引く方の美”だと思うんですが、無駄なものをそぎ落とした、 ”流線型”の綺麗な形というものになる。」
「綺麗っていうのは人の主観なんだけど、この早く走るための流線型っていう美しい形は、流体力学的には理に適っているんですよね。」

國枝)
「そうなんです。」

― 大きな循環のなかで、目指すもの ―

本質を突き詰めていくと、やはりそれは単純化され、よりシンプルなものとなる。
バラづくりでも、システムづくりでも、目指すのは、無駄なものをそぎ落とした、より本質的なもの。

國枝)
「いいものをつくろうとすればするほど、それは単純化されたものとなるんです。農業全体も同じと思いますが、バラでもそうなんです。」
「いいものをつくろうとして、肥料を与えれば与えるほど、逆に良いものでなくなっていくっていう。」

「本当に美しいもの・本当にいいものを突き詰めていくと、実は、野とか山とか、自然に生えているものの方がよっぽど良いんですよね。」

片岡)
「なるほどね。僕も30年くらいシステムをやっていて、結局やっぱりそこなんですよね。最低限のものに絞った方がいいっていう。」
「システムの世界は、常に新しい技術が生まれているんです。お客さんもユーザも欲しているし、技術者も、試したいものがでてくる。 やっぱりエンジニアは、昨日よりも向上していたいっていうのがあるから。」
「それでも、作りすぎないっていうのが、大事だと思っています。本当に必要なその筋っていうのは何か?それを見極めるのが重要だと思って います。常に変化する市場と技術のなかで、残って行ける仕組みを残すには、必要十分な機能に絞ること。そうすることで、その技術はより使い やすく、美しく、機能的になるし、次の世代、さらにその次の世代へも残って行けるものになるんです。」
「実際後世に残っていくものって、やっぱりシンプルで、本質的なものなんですよね。」

國枝)
「そう思います。」

― 次の世代へ、”残せる仕組みを残したい” ―

目指すのは、本質的なもの。シンプルなもの。そんな國枝さんとHALが、大きな循環のサイクルのなかで、
各々の役割の中で、次の世代へ残していくものとは。

國枝)
「新しく作る温室では、生産施設という枠を超える温室をつくろうと思っています。」
「価値の置き方が、生産のためだけでなく、空間自体が価値になるような。」
「そこでは、作物をつくるときに、良い水をつくって、次のセクションとして林業があるんです。山があって里があって海があってっていう、 循環のサイクルの中でも機能しなくてはならないと思っているので。」

片岡)
「いいですね。山から里から海へ。良い水を自然の循環のサイクルへ戻すっていうことなんですね。」

― 大きな循環のなかで、次へのバトンを繋いでいく ―

ひとつのものがそこに残り続けることは、自然の循環の流れの中では有り得ない。万物は常に進化していく。

片岡)
「僕らも、『次の世代に何かを残す』っていうビジョンを掲げているんですが」
「何かを残すっていうより、残せる仕組みを残したらいいんじゃないかと思っています。何かこう、変わって、変わって、変わっていける、 その最初をつくる、みたいな。」
「僕らはシステム屋さんなので。ITをフィールドに、様々な技術を咀嚼して人が使えるようにしていって、残るべきものが循環の中で成長し 進化して行けるようにしたいんです。僕らの持っているPDCAっていう循環によって、次の世代へ残り進化していく、そういう循環の仕組みを 作って行きたいですね。」

國枝)
「いいですね。」
「なんか、僕たちの手に負えない、大きな流れっていうのがあると思うんですが、そのきっかけになってるのは、実は、その自分たちの目に 見えない小さなことだったりすると思うんです。たとえば、僕の原点は、滋賀県のあの土地に生まれたこと。」
「各々は、自分に与えられたフィールドっていうものがあって。その中でも、この大きな循環のサイクルを意識するだけで、何かそれが、 さっきおっしゃったように本質的な意味では、次へのバトンを渡していけることだと思っています。」
「そしてそれが、少しづつ増えていく。良い影響が。」

片岡)
「大きな循環のなかで、その残していく何かは、それぞれ違ったものなんでしょうね。」

國枝)
「そうですね。それぞれのフィールドで、循環のなかで、残していきたいですね。」

生命は自然の循環の中で変化に対応して進化してきた。
子孫を残し世代交代していく循環、エコシステムとしての循環。その戦略によって生命は次の世代に残っていく。
その多様性のなかで、残していく何かは個々ぞれぞれ。

大きな循環のサイクルのなか、私たちHALが「IT」をフィールドに、残していくもの。
それは、変化していく市場や技術革新を受け入れながら、PDCAという循環によって次の世代へ残っていき進化していくような技術や組織。 そして次の世代や、さらにその次の世代が何かを残していけるような、そういう循環の仕組み。

循環のめぐりにそって、次へのバトンを繋いでいく。
HAL は、次の世代へ残したい大切なものが、その先も成長し循環して残って行く仕組みを、IT を通じて、残していきたいと思います。